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株式会社宇田水産 代表取締役・株式会社熱海魚市場 社長 宇田勝さんから見る熱海

熱海に根付き、熱海と共に生きていく熱海人。その方ならではの目線で見る熱海についてお話を伺い、様々な角度から新たな魅力をお届けし、熱海をもっと好きになっていただく企画です。

第4回は熱海をはじめ、近海の変遷や魚を知り尽くし、商人としても熱海を盛り上げるべく尽力されている株式会社宇田水産 代表取締役、また熱海魚市場 社長 宇田勝さんに熱海駅前店売買営業の保坂がお話を伺いました。

株式会社宇田水産 代表取締役
株式会社熱海魚市場
社長 宇田 勝 さん(写真右)

ロイヤルリゾート
熱海駅前店 売買営業
保坂 究生(写真左)

熱海魚市場の原点

第二次世界大戦後の食糧難の中、現在の熱海魚市場は周辺の漁港で集めた魚を提供する配給場でした。配給用に魚を集めていた業者が闇で魚を売り始め、その後、熱海市内に店を構え出し、現在の魚屋になったと言われています。

私は魚屋歴40年。そのうち最初の30年間は小田原漁港などから魚を仕入れていて熱海の魚市場には何も携わっていませんでした。当時の熱海魚市場は大きな取引先を失った最中で経営に迷っていました。その状況を知り、一緒に経営を建て直すよう誘いを受け、来てからというもの、こうした方がいいかなぁとか、あぁした方がいいなぁと改善点を提案しているうちに約10年。いつの間にか社長になっていました。

サイズが小さいために市場に出回っていなかった熱海の地魚の油漬け。通販での注文も可能。

宇田水産プロデュース
ATAMI U/O(ウーオ)各648円(税込)

アジ/オリーブ油
ソウダガツオ/オリーブ油
サバ / ひまわり油
カマス / ひまわり油

魚市場再生への決意と道のり

もともと役員になるつもりはなかったのですが、まだまだやらなくてはいけないことが山積みでした。まず5年前と比べて5000万円減っていた売り上げ。バブルの頃は何もしなくても魚が売れていましたし、何より高い魚が売れた。

反面、バブル崩壊後や震災の後は大変な時期が続きました。まず予算をなんとかしないといけない。そのためには組合員を増やさなくてはいけない。ただもうすでに熱海の魚屋は全て組合員になっているので、熱海の宿泊施設にお願いするしかないと組合員に提案しました。当然、大反対。

ホテルや旅館が競り権を持ってしまうと、魚屋から魚を買ってくれる宿が少なくなり、魚の値段も知られてしまうので利益も少なくなるためです。でもこのままいくと熱海魚市場は倒産することを数字で示し一人一人を説得。旅館組合にも協力を打診し、なんとか手を組んで熱海の魚を多くのお客様に味わっていただけるように、そして熱海のホテルのほとんどで熱海魚市場から新鮮な魚を仕入れて地元の魚を味わうことができるように尽力しました。

熱海魚市場には伊豆山、熱海、網代、真鶴、小田原、沼津など計8ヶ所から魚が集まってきます。魚屋だけでなく、旅館も競り権を持ち買い手が増えれば、魚ももっと集まってきて活気が生まれると考えています。

地域の魚市場になるために魚をもっと食べてもらうために

熱海魚市場で競りをやっていることを知らない人は、まだまだたくさんいると思います。水曜日以外の毎朝7時半から多くの魚屋が集まる活気ある時間です。一般の方にも公開しています。

競りの様子

水曜日を除く毎朝、計8カ所の港で揚がる新鮮な魚介類が並び7時半から威勢のいい声が場内に響き始めます。

競り以外の時間で、もっと人を呼び込めないかと考え、2ヶ月に1度「魚祭り」を開催したり、ボクシングジムなどのワークショップへの貸し出し、また熱海市と連携した食育イベントなども実施しています。

魚祭りの様子

多くの観光客や地元のお客様で朝から賑わいをみせています。地魚が安く買えるほか、浜焼きコーナー、あら汁の無料提供、地元の飲食店の露店なども出店。

開催:9:00~15:00 入場無料

宇田水産としては、魚を安く味わってもらうために熱海駅前の第一ビルの地下1階に「まぐろや」という食堂を経営したり、熱海の魚の味を持って帰っていただきたくて鯵や宗田鰹などのオイル漬けにした瓶詰めなどの商品開発もしています。

観光客だけでなく一般の家庭にももっと魚を取り入れてもらいたいので、熱海ガスのレモナキッチンで魚の捌き方や料理教室も行なっています。

熱海まぐろや

宇田水産直営店。朝どれの新鮮な魚をどこよりも安く味わうことができます。

熱海駅前第一ビル地下1F 不定休(主に水曜休み)
ランチ11:00〜15:00(14:30L.O.)、夕方16:00〜18:00(17:30L.O.)

レモナキッチンでのレッスンの様子

ロイヤルタイムズ第23号の体験企画で「鯵のなめろう作り」に参加し掲載させていただきました。魚を捌くことが初めての売買営業の佐竹と営業事務の高橋に優しく教えてくださいました

繋がりが生み出す大きな可能性

今の熱海の商人は観光客に恵まれているので、わざわざ熱海から出て、熱海の魅力をPRするアクションを起こす方が少ないように思います。他の土地に出向くと、来年のオリンピックも見据えて、自分たちの土地や商品の魅力をアピールしたい意欲をビンビンと感じます。

私はできる限り色々なところに出向いて、多くの情報を聞き入れ、熱海の街に取り入れていきたいという思いがある。外に行くと時々、〝地元の人ではない〟と疎外感を感じることもありますが、何度も出向くうちにいずれ仲間となり情報を共有し切磋琢磨できる同士になっています。

これまで市場間取引が全く無かった網代魚市場とも一緒に手を組んでもらえるようになりました。今年の1月から網代の魚を熱海でも売るようになり、熱海の方も快く網代の魚を買ってくれるようになりました。

一番の効果は3月の後半から5月の中盤にかけて網代で養殖をしたサクラマスを熱海のブランド「熱海マス」として販売する許可が得られました。自分たちで販路を開拓しながら販売しています。本当に美味しいですよ。

第二弾としてサバを考えていて、こちらも色々な飲食店に売り込もうと思っています。ほかにも、魚市場で刺身を販売する許可を取っているので、いずれ月に数回でも一般の人向けに熱海の獲れたての魚を販売できる日をつくれたらいいですね。魚市場として地域のためにやらなくてはならないことが次から次に浮かんできますね。

株式会社 宇田水産
静岡県熱海市桜町17-43
TEL:0557-81-4355
https://udasuisan.jimdo.com/
ネット通販もご利用いただけます!

株式会社 熱海魚市場
静岡県熱海市清水町8-8
「魚祭り」の詳細は熱海市観光協会の公式サイトをご覧ください
https://www.ataminews.gr.jp/

《アクセス》熱海駅よりバス10分「上の山」、「ひばりヶ丘」行き「清水町」バス停下車徒歩約3分