熱海に根付き、熱海と共に生きていく熱海人。その方ならではの目線で見る熱海についてお話を伺い、様々な角度から新たな魅力をお届けし、熱海をもっと好きになっていただく企画です。
今回は「銀座通り」を中心に熱海をリノベーションし「100年後も豊かな暮らしができるまちづくり」を展開する株式会社 machimoriの取締役三好さんに、賃貸営業の飯田がお話を伺いました。
エリアの価値を高める3つの軸
私共が行っている事業は空き家や空き店舗を再生してエリアの価値を高めることで、リノベーションまちづくりと言われる取り組みです。
大きく分けると3つあり、1つ目は「空き店舗や空き家をリノベーションして使える状態にする」こと。ただ使えるだけではなく「エリアの価値を高める」という視点を常に持つことが大切です。ここでいうエリアの定義は「熱海」や「静岡東部」という広いものではなく、「銀座通り」という180mの小エリアを完全なるターゲットにして集中的にリノベーションすることで、「最近、銀座通りがいいぞ!」というような、エリアの変化を印象付け、集中的に仕上げたところから広げていくという、エリアを意識したリノベーションを行っています。
2つ目は「公共空間を考える」ことです。小さな空間には民間敷地だけではなく必ず公共空間が入っています。ここでいえば「銀座通り」という道路。遊休化している道路を新しい使い方をして「こんなにおもしろいことができるんだ」と発見してもらう。その具体的な例が「あたみマルシェ」です。新しい使い方でエリアの価値を高めていくと、マルシェに出店した方が海外進出をしたり、自分のお店を持ったりと、プレーヤーの発掘やテストマーケティングを通して、新しい試みが生まれるきっかけ作りが可能になります。
▲海辺のあたみマルシェの様子
熱海銀座通り商店街で行われているクラフト&ファーマーズマーケット。「七輪焼きスペース」で伊豆の味も味わえます
3つ目は「不動産オーナーとの関係づくり」です。色々とビジョンを立てても結局、不動産オーナーが貸してくれないと意味がないのです。5年前の銀座通りは30店舗のうち10店舗が空き店舗でした。今では実質ゼロになりましたが、銀座通りも他のシャッター商店街も、どうしてそうなってしまうのかというと、見知らぬ方には貸したくないという思いや、このままでも特に困らない現状があるから。
店舗をそのままにする結果、空き店舗が増えてシャッター商店街になってしまいます。不動産オーナーが「不動産を貸さないことで町がどういう状況になってしまうのか」とか、「将来の自分の財産がご子息やお孫様にとってどういう影響があるのか」を一緒に考えると、信頼できる人だったら貸そうという考えに変わってくると思うのです。だから不動産オーナーとの関係づくりがとても大事になってきます。
〝まちの記憶を残す〟宿泊業
まちを盛り上げるということは、単発的に人を集めることではなく、継続的にそのエリアが活気づけられ、うまく商売が成り立ち、そこにしっかりと仕事があることに尽きます。だから、新しい仕事を創る人、新しいものにお金を使いたい人をどう集めるか、そのために不動産オーナーの理解をどう得るかを常に考えています。
私共の業種は、ゲストハウスMARUYAの宿泊業、naedocoのシェアオフィス、RoCAのシェア店舗と普通ですが、「今まで熱海になかったこと」を実践するよう心がけています。宿泊業に関しては、そこに泊まって、食べて、温泉に入って帰るという、熱海でなくても出来るオールインクルーシブのスタイルが主流ですが、ゲストハウスMARUYAでは、熱海の街中に出て、名物のお母さんがいる料理店や、昭和の雰囲気漂う喫茶店など、まちに根付いたお店を案内します。
そうすると〝熱海のまちの記憶が残る〟ので、また熱海に行きたいという思いを生み出します。熱海のまちを〝宿〟に見立てて、まちにお金を落としていただき、まちのコンテンツを楽しんでもらうという考えで宿泊業をやっています。
▲ゲストハウスMARUYA
今まで知らなかった、熱海のまちのつかいかたに出会える場所。熱海で暮らすように過ごせるゲストハウス
▲シェアオフィス naedoco
熱海のコワーキングスペース&シェアオフィス。ミーティングや勉強会など1日単位からでも使えます
▲シェア店舗 RoCA
「caffé bar QUARTO(カフェ・バール・クアルト)」とジェラート屋「La DOPPIETTA(ラ・ドッピエッタ)」、奥にはイベントスペース
未来のお客様がまちをつくる
宿をやったら人が集まり〝何か仕事をしてみたい〟という話が出てきたので自分たちの仕事場を兼ねて人にも貸すシェアオフィスを作りました。〝仕事があれば住むところ〟ということでシェアハウスを作ります。今、使いたい人が使うというのも大事ですが、将来、このまちを使ってほしい人を意識し、このエリアに呼び込みたいお客様をターゲットにすると、これまでにない需要を創り出すことができます。まずは自分たちが先駆者となり、未来のお客様に〝使い方〟を提供することから始まります。
熱海を訪れる人にとって、最初に関わる熱海人との出会いはとても大切で、地元の人と触れ合うことが難しい現状、MARUYAでは1Fをカフェにして旅行客と地元の方とが触れ合う機会を作っています。旅行者は地元の人と触れ合いたいし、地元の人はもっと熱海を知ってほしい。「地元の人にとっては〝旅するように暮らせる〟まち、旅行者にとっては〝暮らすように旅する〟まち」を意図的に作り、観光と定住のあいだにある多様な暮らしを作ることが私たちの今後の方向性のひとつです。
中心人物の偉大なる力と私が熱海を好きな理由
これらの活動を進めて約8年。ここまで出来た背景には色々な人の支えがあってこそでした。色々な人とは、商店街の各世代の中心人物をはじめとして、上の世代の方々のバックアップを受けてきたことが大きく、「なんとかしたい」と思う人たちの力が集まって起きてきたことだと思います。
たくさんの人の助けがあり私たちが表に出させていただく機会がありますが、多くの力が重なり合って、同時多発的に新たな動きが出たのだと思います。地元の方の深く熱狂的な熱海愛。私自身は東京の出身で故郷がないので、地元をここまで愛せることに憧れを抱いています。
熱海には好きなことをして暮らしている人がとても多い。私が熱海に惹かれた魅力の1つがこれです。「この人、普段は何をしているんだろ?」と、生業に関わらず〝まちの人〟として楽しそうに生きている。そういう方々は、仕事は1つでなくてはいけないという概念を持っておらず、色々な顔があります。〝普段は卸業ですが、実は歌手もやっています〟のように。
そういう人たちとの出会いが、私にはとても大きかったです。東京時代の、家と仕事場との往復ではなく、本当に自分はどうしたいのか、どう生きていきたいのか、それを知ることができることが、私が熱海を好きな直接的な理由です。
インタビュアー 賃貸営業 飯田より
「最近銀座通りが賑やかになった。」地元生まれの私も感じておりました。それは突発的に盛り上がりを見せたのではなく、裏に三好さんのような地元と移住者を心地よくつなぐ努力があってこその盛り上がりなんだと強く感じました。
machimori
静岡県熱海市銀座町6-6 サトウ椿ビル2F
電話番号:0557-52-4345
http://machimori.jp/
- naedoco
http://naedoco.jp/ - MARUYA
http://guesthouse-maruya.jp/ - 海辺のあたみマルシェ
http://atamimarche.jp/