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売買契約において買主から受け取る手付とはどのようなものですか?

売買契約の際、買主は手付を支払う。
解約手付の性格を理解する。

売買契約の際、買主は売主に対して手付を支払わなければなりません。手付とは一般的には契約締結時に当事者の一方が相手方に交付する金銭を言い、その金額は売買価格の10%程度に定められる場合が多いです。売主、買主間で特段の合意がない限り、手付解除期日内であれば自己の都合で解約することができます。しかしその場合には、売主は手付の倍返し、買主は手付を放棄しなければいけません。(手付流れ)
たとえば、Aさん(売主)とBさん(買主)との間で3,000万円の売買契約を結び、AさんはBさんから売買価格の10%にあたる手付金300万円を受け取った。ところがその直後、Aさん所有の住宅を4,000万円で買おうという買主Cさんが現れた。この時AさんはBさんに600万円を返し(手付の倍返し)、Cさんと4,000万円の売買契約を結ぶことが可能となります。Aさんは、たとえ手付の倍返しをしても、高い価格による買主が現れたため、結果的には400万円の得をするというわけです。
Cさんのように、1,000万円も高値で買おうとする買主が現れるかどうか、Bさんと契約した後にCさんとの話を進めるAさんが道義的にどうなのかという問題は残るにせよ、手付はこのような性格を持つことを理解しなければなりません。
※買主が売買代金を全額一括で支払い、同時に売主が売却不動産を引渡しできる
 状況での契約は対象外です。

倍返し、手付放棄による解除は法律で決められている。

逆に買主の側から言えば、自己都合で解約をする場合には手付を放棄することになります。たとえば、あるリゾートマンションを購入するつもりで売主と売買契約を結び、300万円を手付金として支払ったDさん。契約後自宅に戻り家族に報告したところ猛反対にあい、Dさんは仕方なく解約の申し出をしたところ、不動産仲介会社より「支払った手付金は流れます」との返事が戻ってきました。これも法律的に言うと、Dさんの手付金が流れるのは致し方ないところです。それが売買契約上の手付の法的な性格だからです。
ただし、民法557条1項では手付の放棄・倍返しによる解除は、当事者の一方が履行に着手した時までと定めています。売買契約では一般的に手付解除期日が設けられ、この期日までの間であれば手付の倍返し、手付放棄で契約を解約できることになります。その期日を過ぎてからの解約は違約となり、違約金を相手方に対し課すことができるようになります。
例外的なものとして、買主が住宅ローンの利用を条件として購入する場合、金融機関などからローンの借入れが否認された場合には手付金が売主から全額返金され、売買契約の解約をできる旨の条項を契約書に明記することになります。自宅の売却が条件となる買い替えのケースなども同様です。

今回のご相談に関するポイント・アドバイス

  1. 売買契約の際、買主は売主に売買価格の10%程度の手付金を支払う。
  2. 自己都合で解約する場合には売主は手付の倍返し、買主は手付放棄(手付流れ)となる。
  3. 契約、手付の性格をよく理解し、慎重に契約を結ぶことが大切。
民法第557条1項
[手付]
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
民法第557条2項
[解約手付による解除の効果]
解約手付により契約が解除された場合には、損害賠償請求権を生じません。