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「ゆっくりで大丈夫」親切心から生まれたショートストーリー

小雨の降る夜のことでした。仕事帰りに立ち寄った駅前のスーパーで、食材をかごに入れ、レジに向かうと、私の前にはおばあちゃんが一人で並んでいました。首を悪くしているのか、あまり上を向くことができず会計をするのにかなり時間がかかっていました。

私はふと自分の祖母を思い出しました。実家に帰るたび祖母の財布が小銭でいっぱいになっていることに気づき、理由を聞いたところ「お金を早く出さないと、レジで並んでいる後ろの人に迷惑がかかるから、いつもお札で買い物をしている」とのことでした。そのことを思い出し、気がつくと「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声を掛けていました。それを見ていたレジ係の女性や私の後ろに並んでいたサラリーマンも口を揃えて「ゆっくりで大丈夫」と優しくほほ笑みました。

会計が終わり袋詰めをしていると「さっきはありがとういつも周りの方に迷惑のかからないよう遅い時間に買い物をしているのだけど、今日は都合がつかなくて。本当にありがとうございました」と、先ほどのおばあちゃんが来てくれました。私はそれを聞いて、この社会がもっと高齢者子ども優しくなれば良いなと思いました。そのために、小さなことでも自分のできることをこれからも続けていきたいと思います。